近年、熟年離婚が増加傾向にあります。しかし、長年連れ添った夫婦が離婚すると、特に経済面で大きな問題が発生しやすくなります。「離婚後に生活できない」と悩む人も多いのが現実です。本記事では、熟年離婚後に直面する経済的リスクと、その対策について詳しく解説します。
熟年離婚後に生活ができない理由
熟年離婚を考える際、多くの人が直面するのが「生活できない」という不安です。ここでは、熟年離婚に伴う生活困難の主な原因と、それに対する対策を検討していきます。
収入の減少
熟年離婚後、最も大きな問題となるのが収入の減少です。夫婦共有の財産や、退職金、年金など、離婚前には一つの家庭で支えていた収入源が分かれることにより、生活基盤が揺らぐ危険があります。
離婚後、特に年金を受け取る年齢に近づくと、収入が限られることは否めません。例えば、単身の生活費が高くつくことが多い50代後半から60代では、経済的なプレッシャーがのしかかります。
- 専業主婦だった場合:離婚後すぐに安定した収入を得るのは難しく、再就職も年齢の壁がある。
- 年金の分割:厚生年金は分割できるが、もともとの額が少ないと生活費が不足する。
- 退職金の分与:受け取れる金額が減り、老後の資金計画が狂う。
資産の分与による影響
離婚時には財産分与が行われますが、以下のようなケースでは十分な資産を確保できない可能性があります。
- 住宅ローンが残っている場合:持ち家があっても売却するか、どちらかが住み続けるかで揉めることが多い。
- 預貯金の不足:共働きでなかった場合、貯蓄額が少なく、生活費が確保できない。
- 借金のリスク:配偶者が借金を抱えていた場合、返済義務が発生する可能性がある。
再就職の難しさ
離婚後に再就職しようとしても、熟年世代の就職は簡単ではありません。
- 正社員採用が厳しい:経験やスキルが不足していると、パートやアルバイトが主な選択肢になる。
- 健康面の問題:長時間労働が難しく、収入が安定しない。
- 年齢制限:企業側が求める人材年齢と合わず、希望の仕事に就けない。
熟年離婚で生活苦に陥らないための事前準備

熟年離婚を検討している方にとって、離婚後の生活を支えるための準備として、生活費をしっかりと計画しておくことは非常に大切です。ここでは、具体的にどのように生活費の準備を進めればよいかを解説します。
経済的影響を理解する
離婚後に経済的な困難に直面しないためにも、自身の生活費がどの程度必要になるのかを事前に具体的に把握することが不可欠です。自身のライフスタイルに合わせた予算を組むために、以下の項目を考慮してみましょう。
- 住居費: 家賃や住宅ローンの月々の支出
- 食費: 食料品や外食に必要なコスト
- 光熱費: 電気、ガス、水道といった定期的な費用
- 保険料: 健康保険や生命保険の月額支払い
- 医療費: 診療や薬代などの経費
- その他の生活費: 趣味や交際にかかる支出
これらの項目について、月ごとの費用を明確に算出することで、将来の不安を軽減することができるでしょう。
一人暮らしの場合、月々の生活費はおおよそ16万円が一般的とされています。
熟年離婚後の生活費を確保するには、受け取れる年金の金額や退職金があるかどうかを把握することが必須です。これにより、生計を立てるための計画が立てやすくなります。
また、離婚を前提としている場合、予期せぬ出費に備えて緊急資金を準備することが重要です。以下のような状況で役立ちます。
- 突然発生する医療費
- 離婚交渉に必要な費用
- 新しい住居にかかる初期費用(敷金や礼金など)
理想的には、数ヶ月分の生活費を緊急資金として確保しておくことで、不安が軽減されるでしょう。
財産分与を有利に進める準備
離婚後の生活を考え、できるだけ有利な条件で財産分与を進めることが重要です。
離婚時に受け取れる財産や年金分割、慰謝料の請求に関する情報を事前に確認しておくことで、離婚後の生活費を確保できる可能性が高まります。この知識が将来の不安を軽減します。
- 共有財産の把握:不動産、預貯金、株式などの財産を事前に整理。
- 専門家に相談:弁護士やファイナンシャルプランナーのアドバイスを受ける。
- 住宅ローンの清算方法を検討:売却するか、住み続けるかを明確にする。

年金分割を活用する
年金分割を正しく活用すれば、離婚後の生活費の一部を確保できます。
年金分割制度は、結婚期間中に積み立てた年金を分けることができる制度です。特に専業主婦の方々にとって、この制度は新たな収入源を得る手助けとなります。年金分割には主に次の2つの方法があります。
- 合意分割:両者の合意に基づいて年金を分割する方法。
- 3号分割:専業主婦が第3号被保険者として的確に処理される場合に適用される方法。
一般的に、これらの方法を用いると年金は2分の1に分割されますので、ぜひ検討してみてください。

年金分割は離婚成立後2年以内に手続きが必要です。

再就職・副業の準備をする
離婚を考える前から、離婚後の収入を確保するため、働き方を見直しましょう。年齢によっては職場選びに制限があるかもしれませんが、早めに行動を起こすことで選択肢を広げられます。
- 資格取得を検討:医療・介護・事務系の資格を取ることで、仕事の選択肢を増やす。
- 副業や在宅ワークを活用:ネットを活用した収入源(ライティング、販売業など)を確保する。
- 職業訓練を活用:ハローワークの支援制度を利用し、再就職の可能性を高める。
熟年離婚後、フルタイムの仕事を見つけるのが難しい場合でも、アルバイトやパートタイムの仕事を通じて収入を得ることは可能です。今後の生活を支えるため、自分に合った仕事を探すことが重要です。また、以下の条件を満たせば、雇用保険の受給ができる場合もあります。
- 現在、失業中であること
- 離職前に一定の期間(通常12カ月以上)被保険者として勤務していたこと
こうした制度を活用し、自分に適した働き方を見つけることが重要です。
住居の選定
離婚後の住まいについて、どのような環境が自分に適しているかを事前に考慮することが大切です。自宅を残すか、新たに賃貸を探すか、あらかじめシミュレーションしておくと良いでしょう。
生活費に関する相談先を持つ
悩みを一人で抱え込まず、相談できる相手や専門家を持つことも重要です。例えば、
- 弁護士やカウンセラー: 離婚後の生活を見越して、法的なアドバイスや具体的なサポートを受けることができます。
- 相談窓口: 地域の相談窓口や離婚相談センターを活用し、専門家から適切な情報を得ると良いでしょう。
このような準備を行うことで、熟年離婚後の生活をより安心して過ごすことができるでしょう。
時間をかけて丁寧に計画を立て、自分の未来に自信を持てるように取り組みましょう。
熟年離婚後に生活を立て直す方法

節約と支出管理の徹底
収入が減る分、無駄な支出を見直すことが重要です。
- 固定費の削減:家賃、通信費、保険料を見直す。
- 食費・光熱費の節約:自炊を増やし、生活費を抑える。
- 不要な支出をカット:娯楽費やブランド品の購入を控える。
公的支援を活用する
生活に困窮している場合、生活保護を受ける選択肢も視野に入れることができます。生活保護を受けるには、以下の条件を満たしている必要があります。
- 公的な支援を受けていること
- 家族や親族からの援助がないこと
- 病気や負傷により働くことができないこと
- 資産を持たないこと
地域によっては最低生活費の基準が異なるため、事前にしっかりと調査を行い、必要な情報を収集することが求められます。
そのほか、以下のような制度もあります。国や自治体の支援制度を活用すれば、生活費の一部を補填できます。
- 生活保護の申請:生活が困難な場合、受給資格を確認。
- 高齢者向けの年金支援制度:特例措置が適用されるケースもある。
- 住宅手当・医療費補助:自治体の制度をチェック。
住まいの工夫をする
住居費は生活費の中でも大きな割合を占めるため、工夫が必要です。
- 賃貸への住み替え:広すぎる持ち家を手放し、家賃の安い物件へ引っ越す。
- シェアハウスの活用:シニア向けシェアハウスで、生活費を抑える。
- リバースモーゲージの利用:持ち家を担保に生活資金を確保する方法も検討。
まとめ:熟年離婚後の生活設計は事前準備が鍵
熟年離婚後に「生活できない」とならないためには、事前の準備が何よりも重要です。
- 財産分与や年金分割をしっかり行う
- 再就職・副業を視野に入れる
- 支出を見直し、公的支援を活用する
離婚は人生の大きな転機ですが、しっかりと計画を立てれば、新しい生活を安定させることが可能です。事前準備を怠らず、後悔のない選択をしましょう。